モイカ河のほとりにて…1980年夏2011/04/12 21:28

中野吉宏著
『いつかモイカ河の橋の上で』
2004年、第三書館

  思い出の橋の上で記念の写真を撮り、ターニャたちからは住所と電話番号をもらい、エドワルノとは、明日、一緒に美術館に出かける約束をした。北京から断続的に旅を共にしてきたサラとは本当に最後となる挨拶をした。そして4人は地下鉄のエスカレーターへと消えて行った。



 レニングラード(現在のサンクトペテルブルグ)というとネバ川だが、他にも有名な運河がある。モイカ運河もその一つ。帝政ロシアの時代は運河が重要な交通や運搬の手段だったようだ。街の中を散策すると川の多い美しい都との印象を受ける。水に恵まれたピョートルの都。大阪と姉妹都市ということだが、川の位置付けでも共通点がある。 ここはモイカ運河に沿った通り。静かなところだ。モスクワに比べても、こちらは少しのんびりしている。この界隈の昔からの趣は変わっていないのだろう。ドストエフスキーの小説の一場面にもありそうな一角だ。このあたりは立派な建物が多く、裕福な人たちが住んでいたような雰囲気だ。