ブロードウェイ(その1)…1983年夏2012/07/27 20:04

O・ヘンリ著、大久保康雄訳
『O・ヘンリ短編集(二)』
1969年、新潮文庫

「賢者の贈りもの」
 出てきたのは櫛が一揃い――デラが長いあいだブロードウェイのショーウィンドーであこがれていた横櫛と後櫛の一揃いだった。ふちに宝石をちりばめた正真正銘の鼈甲製の美しい櫛であり――いまはなき彼女の美しい髪にさすには、もってこいの色合いだった。とびきり高価なものであることがわかっていたし、単に熱望するだけで、自分のものになろうなどとは夢にも思わずに、あこがれていた櫛だった。

 

 カリフォルニアのクレアモントで研修を受けた後、東海岸にやってきた。この後はワシントンDCだけ訪問するつもりだったが、急きょニューヨークも訪問することになった。航空券の変更でけっこうお金をとられたが、あこがれのニューヨークに行けたのは嬉しかった。
 ニューヨークのダウンタウンは狭いので、効率的に回ることができる。ブロードウェイでミュージカルを見ることにした。入口ではいろんな出し物が一目でわかるようになっている。何しろ突然のニューヨーク訪問なので、事前に何を見るか考える時間もなかった。今のようにネットもないので、どんな出し物があるかも分からない。しばらくこの界隈を散策してみることにした。