オルセー美術館(その15)<マチスの『豪奢、静寂、そして逸楽』>…1998年夏2013/05/28 21:32

エミール・ゾラ著、清水正和訳
『制作(下)』
岩波文庫、1999年

   そもそも、だれもが同じ穴のむじなだった。たいていの者は絵を一目見るとすぐに思ったことを口にするのであるが、ついで当作品の署名を見たとたんに、あわててことばを濁すのであった。そのうちだんだん用心深くなり、まず背を丸めて作者を確認したあとでないと口を開かなくなっていた。



   これはちょっと時代が新しくなる。マチスの絵だ。日本でもちょっとした絵画愛好家が好む絵だ。ちょっとしたサラリーマンでもマチスの版画を描っている人は少なくない。シャガールのリトグラフを持っている人も多いが、作風はだいぶ違う。マチスの絵画は毒っぽい要因もないし、普通の家の居間あたりに飾ってもうまくはまる。これは『豪奢、静寂、そして逸楽』という作品。