ローマ地下鉄(その1)…2001年夏2014/04/17 22:22

海野弘編
『モダン都市文学Ⅸ 異国都市物語』
平凡社、1991年

 中山巍 「ローマ 碧空・燕・藤の花」
 私は独りフォロ・マノを歩き廻り疲れた体をくち残った土台石の上に休めた。名も忘れたイタリー烟草をふかし乍ら冷い石塊の上に仰臥して見た空位深く澄んだ濃い美しさをかつて見たことがない。



 ローマには夜遅く着いた。乱暴なタクシーの運転手、夜に映える美しいローマの光景。朝がやってきて明るくなると、最初の印象とは違う様相の街になる。古代遺跡を守るために、無制限な都市開発は行われていない。パリ、ロンドンなどに比べると、狭小な印象がある。
   さて、ローマでも地下鉄を利用する。切符を自動販売機で買おうとしたが、日本の機械のようにどんなお札でも受け入れるわけではない。人間から買うこととした。