牧羊犬が恐れる猫…1997年春(現地は秋)2011/10/25 21:06

イソップ著、中務哲郎訳
『イソップ寓話集』
岩波文庫、1999年

389 鳥を招待する猫
 猫が誕生日の祝いをするという口実で、鳥たちを食事に招いた。そして、部屋に入りきるのを見すまして、戸を閉め、一羽ずつ食べはじめた。
 甘い期待に向かって進み、反対の目に遭う人々に、この話はあてはまる。

 

 引き続き、ニュージーランドでの話。一仕事終えた牧羊犬が戻ってきた。お疲れ様といってやりたくなる。息を切らすこともなく、余裕で帰ってきた。多くの羊をコントロールし、立派な仕事をやりとげただけに、威厳に満ちた雰囲気だ。ところが牧羊犬の権威が失われてしまう出来事が起こった。


 その犬に一匹の猫が近づいてきた。この猫も牧場で飼われているのだろう。猫が牧羊犬に近づくと、牧羊犬はおびえて、後ずさりする。写真で見ると、対等に向き合っているようだが、犬が逃げているのだ。無敵と思われた牧羊犬がこの猫には弱かったわけだ。こんな関係は人間の世界でもよく見られる。何者もおそれないように見える人物が弱そうな人を苦手としたり。とにかく、猫に怯える牧羊犬の姿はおかしかった。


ニュージーランドの羊(その1)…1997年春(現地は秋)2011/10/04 20:30

L・キャロル著、矢川澄子訳、金子國義絵
『鏡の国のアリス』
1994年、新潮文庫

  女王様を見ると、おやおやいつのまにか全身すっぽりヒツジの毛にくるまっている。アリスは目をこすって、もういちど見直した。いったい全体どうなっちゃっているんだろう。


 
   ニュージーランドに来たら、否が応でも羊の大群を見ることになる。オプショナルツアーに参加し、鉄道に乗って、自然の景色を見たり、羊牧場を見学することとなった。羊というと平和的なイメージだけでなく、黙々と働いたり、組織のいいなりになるような悪い喩えの文脈で言及されることも多い。「羊のようにおとなしい日本のサラリーマン」などという表現がぴったり当てはまったりする。「羊たちの沈黙」という有名な映画もある。他のオプショナルツアーから人たちとも一緒になる。日本人もけっこういた。ニュージーランドは何度も訪れる人も多い。


   クライストチャーチからちょっと移動したところ。どこを見ても羊、羊、羊。眠れない時はこうした光景を思い浮かべればいいのだろうか。日本とニュージーランドは時差がほとんどないから、時差ぼけもないようだ。快適な気分で、旅行をすることができた。日本はゴールデンウィークの真っただ中。南半球なのでこちらは秋。紅葉のきれいな季節だ。


クライストチャーチ大聖堂…1997年春(現地は秋)2010/03/09 21:45

 ポール・クリーヴ著、松田和也訳
 『清掃魔』
 2008年、柏書房

 いつもと同じクライストチャーチの朝。早くも退屈。ワードローブの服を見るが、どれも大してぱっとしない。適当に服を選んで、朝食。トースト。コーヒー。いつもそれだけだ。金魚相手に、カレンやらスチュワートやら「ナフィンク」の連中の話をする。金魚は熱心に俺の話を聞いている。その忠節に免じて餌をやる。


 初めての南半球への旅行。時差はほとんどなく、ひたすら飛行機は南下する。オークランドでいったん降りて、空港内のカフェテリアで時間を潰す。南半球を上にした大きな世界地図が掲示されていて、南半球に来た実感が。
 モナ・ベイル庭園などをざっと見て、ホテルにチェックイン。その後、クライストチャーチをはじめて散策する。日曜日だったか、休みの店が多く、閑散としている。ちょっと寂しい。この時、ニュージーランドは大胆な規制改革で活力を取り戻した国として注目されていた。それだけに、ちょっとイメージが異なる。
  大学時代の友人がクライストチャーチに遊学していて、美しい絵葉書をたびたびもらった。勿論、クライストチャーチ大聖堂の写真のカードもあった。


   クライストチャーチのシンボルでもある英国国教会の教会。市内の繁華街にあるが、ゆったりした空間にはまっている。