こぐまのミーシャ…1980年夏2012/03/23 01:25

今野 敏著
『凍土の密約』
文春文庫、2012年

 倉島はうなずいた。隠し事をしたり、誤魔化したりしている様子はない。彼女は、本当にペルメーノフのことをただのジャーナリストだと思っていたようだ。
 ここで彼がスパイだったなどと告げる必要はない。
「彼はロシアの話などはしていましたか?」
「ええ、故郷の話はしていましたね。ミーシャは、モスクワ生まれのモスクワ育ちだと言ってました」
 ミーシャというのは、ミハイルの愛称だ。



 ソビエト・ロシアを訪問したのはモスクワオリンピックが終わった直後。日本は不参加となったので、オリンピック中継は全く見なかったが、マスコットとなった「こぐまのミーシャ」は人気があった。オリンピックの少し前に「こぐまのミーシャ」というアニメ番組が放送されていたことを記憶している。そのキーホルダーを買った。残念ながら、鍵をぶらさげる金具はとれて、どっかへ行ってしまったが、本体のクマのほうは健在である。
   当時のソ連ではチェブラーシカの映画も作製されていたが、諸外国にはほとんど知られていなかった。外貨を稼ぐためでもあるせいか、ソ連での外人向けの品は値段が高かった。自由な為替市場にも参加していなかったので、当時は1ルーブルが400円くらいと強気の相場が設けられていた。しかし、実際にはドルを闇で買う一般人も街中に溢れており、ソ連の通貨の実力は弱かった。このミーシャも色あせたが、腰につけている紙製の五輪のベルトはしっかり残っている。

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