トレチャコフ美術館…1980年夏(その1)2013/07/19 21:19

イリヤ・レーピン著、松下 裕訳
『ヴォルガの舟ひき』
中央公論社、1986年

   こういうふうに生活の大本からおびやかされたロシア芸術の若々しい萌芽は、そのまましぼんで枯れてしまうほかはなかった。そこへ豊かなロシア人たちが現われ、これらの幼い芽生えを庇護して、そうすることでロシア絵画にきわめて強固な土台を置いたのだった。それは、コジマ・ソルダチョンコフ、パーヴェル・トレチャーコフで、とりわけトレチャーコフがそうだった。



   モスクワにあるトレチャコフ美術館を訪問した。これも世界有数の美術館の一つだ。クレムリンからずっと南に行ったところ。モスクワ川と運河を渡った先にある。美術に理解のあるトレチャコフ兄弟が美術品を収集しながら、芸術家を育成していたことが背景にある。
   芸術というのはパトロンとか資産が後押しすることが多い。トレチャコフ美術館は建物そのものが芸術品だ。見ての通り、赤と白を織り交ぜたエキゾチックな建物に特徴がある。ソ連製の赤い車が写ったことが一層この写真を引き立てることとなった。