パリ地下鉄(その2)…1998年夏2014/04/01 20:58

レーモン・クノー著、生田耕作訳
『地下鉄のザジ』
中公文庫、1974年

「ええと、地下鉄は? あっちだったね(身振り)?」
「そう。あっちです」
「教えてもらって助かったよ」男は言う。「とくにスト中ときはね」
「でも地図が参考になりますよ」グリドゥーは言う。
 彼は靴底を力一杯叩きだす、そして男のほうは立ち去る。



 パリの地下鉄の動く歩道。大都市の地下鉄は路線も多く、乗り換えの必要性も高いので、こうした歩道はありがたい。やはり世界一の観光地だけあって、パリを回るといい気分になる。
   東京と違って、本当の都心部はこじんまりしているので、効率的にも観光できる。パリ市民がフランスパンをむき出しにして歩くのも、職住近接だからできることだと聞いた。東京だと郊外から通う人も多いので、きちんと包装してもらわないと話にならない。

パリ地下鉄(その3)…1998年夏2014/04/03 19:55

レーモン・クノー著、生田耕作訳
『地下鉄のザジ』
中公文庫、1974年

 旅行者たちは、漠然と察して、もはやまったく笑いごとではすまされないと受け取り、ひそひそ声で、彼らの母国語で相談し合った。ある者は小娘をセーヌ川へ投げ込もうという意見だし、他の者は彼女を旅行用毛布に包んで防音用に真綿を噛ませ、何処かの駅の一時預りに預けようという意見だ。誰も膝掛けを犠牲にしたくないのならトランクでも間に合うだろう、思い切り押し込めば。



 サンジェルマン・デプレ近辺のホテルに泊まっていたので、そこが起点になる。小さなホテルで朝食をとって、パリの散策に出かける。サンジェルマン・デプレの地下鉄の駅。ホームで撮影した写真である。パリにいるというだけで、ハッピーな気分になれる。
   ありきたりであるが、凱旋門、エッフェル塔、ルーブル美術館、オルセー美術館などの名所はくまなく回る。それからおしゃれなカフェにも何度も入る。地下鉄を乗りこなせば、どこにでも行ける。

パリ地下鉄(その4)…1998年夏2014/04/05 08:02

レーモン・クノー著、生田耕作訳
『地下鉄のザジ』
中公文庫、1974年

「らしいわね」とザジ。「とにかく、あたしは、なんてったってこんなに不味いもの食べられないわ」
「お嬢さん、何か?」騒動を嗅ぎつけた老獪な給仕が猫なで声で尋ねる。


 パリの地下鉄。2階建ての車両も来る。新幹線などではあるが、日本の地下鉄で2階建ての車両は見たことがない。この車両なかなか大きくて、迫力がある。世界各国を旅して、いろんな観光名所を見るのはもちろん楽しいが、地下鉄だのバスだの公共機関そのものに乗ることも面白い。地下鉄については、そんなに違いがあるわけではないが。

パリ地下鉄(その5)…1998年夏2014/04/08 20:12

レーモン・クノー著、生田耕作訳
『地下鉄のザジ』
中公文庫、1974年

「さよなら、小父さん」ザジはうわの空で言う。
 ジャンヌ・ラショールは彼女を車室に引きいれた。
「で楽しかった?」
「まあまあね」
「地下鉄は見たの?」
「うゥん」
「じゃ、何をしたの?」
「年を取ったわ」



 こちらもパリの地下鉄の車両。この車両だったかどうか、覚えていないが、目の前にロマの少女が座って、いきなりアコーデオンを演奏し始めた。突然こんなことをされるとびっくりしてしまう。哀愁に満ちた曲だけに、ちょっと感傷的な気分になる。しかし、そこで反応したり、写真を撮ったりしたら、お金をせびられることになるから無視していた。
 その少女はまた別の場所に移り、演奏を始めた。そんな行動を繰り返している。それから地下鉄の中で、何やら演説している危ない人物もいた。日本人の観光客がいて、「さすがにパリだ」と感激していた。単なる変人だけだったと思うが。

台北地下鉄(その1)…1998年春2014/04/10 20:22

ベンソン・ボブリック著、日高敏・田村咲智訳
『世界地下鉄物語』
晶文社、1994年

 もし、地下旅行というアイディアに初めがあるとすれば、それは遠い神話の、時を超えた時代のことである。年代不詳の古代の寓話がそれについて物語っている。


   突然台湾行きが決まった。忙しい日程をやりくりして、台北にやってきた。ここも地下鉄が発達している。ダイヤは正確で、快適だ。総督府などは見終わって、自由に行動することになった。台湾は九州くらいの大きさ。鉄道が発達していて、旅行するにも都合がいい。
   台北の街を回るには、やはり地下鉄が一番便利だ。まずは駅に行ってみる。大きな駅だ。普通の列車もあるし、地下鉄も走っている。


台北地下鉄(その2)…1998年春2014/04/12 07:07

ベンソン・ボブリック著、日高敏・田村咲智訳
『世界地下鉄物語』
晶文社、1994年

 英雄たちの冒険は生き生きとしていて、地下旅行の始まりをまるで現実のもののように思わせるが、その英雄たち、オルフェウス、ヘラクレス、テーセウス、オデュッセウス、アイネイアス(それに外典である二コデモスの福音書におけるキリスト)の名前なくしては神話そのものの成立も危ぶまれるだろう。


   台北の街をぶらぶらする。しかし、徒歩だけで回れるほど小さなところではない。アジアの都市部は限りなく大きくなる傾向にある。東京が今一つ外国人の観光客に魅力がないのは、都心部があっちこっちに分散し、広くなりすぎていることにもある。台北は地下鉄で移動する。結局はちょっとはずれの淡水まで行くことになった。治安もいいので、安心して乗れるし、快適だ。

シンガポール地下鉄…1998年夏2014/04/15 20:33

海野弘編
『モダン都市文学Ⅸ 異国都市物語』
平凡社、1991年

阿部金剛「新嘉坡」
 新嘉坡であるかないか私は知らない。
 ただヴェル・エメロウドウの椰子の葉と紅殻色の土を思い起こすばかりだ。


 
   シンガポールはパリ訪問のための乗継地だった。しかし時間がけっこうあったので、空港にずっといるのももったいなかったので、シンガポールの街に出た。結局はバスでマレーシアにも行ってしまったのだが。
   やはり近代都市国家であるシンガポールも地下鉄が完ぺきに整備されている。赤道直下の国だし、外は暑いので、地下鉄がますます快適に思える。途中スコールみたいな雨も降ったからなおさらだ。


ローマ地下鉄(その1)…2001年夏2014/04/17 22:22

海野弘編
『モダン都市文学Ⅸ 異国都市物語』
平凡社、1991年

 中山巍 「ローマ 碧空・燕・藤の花」
 私は独りフォロ・マノを歩き廻り疲れた体をくち残った土台石の上に休めた。名も忘れたイタリー烟草をふかし乍ら冷い石塊の上に仰臥して見た空位深く澄んだ濃い美しさをかつて見たことがない。



 ローマには夜遅く着いた。乱暴なタクシーの運転手、夜に映える美しいローマの光景。朝がやってきて明るくなると、最初の印象とは違う様相の街になる。古代遺跡を守るために、無制限な都市開発は行われていない。パリ、ロンドンなどに比べると、狭小な印象がある。
   さて、ローマでも地下鉄を利用する。切符を自動販売機で買おうとしたが、日本の機械のようにどんなお札でも受け入れるわけではない。人間から買うこととした。

ローマ地下鉄(その2)…2001年夏2014/04/20 18:27

海野弘編
『モダン都市文学Ⅸ 異国都市物語』
平凡社、1991年

 中山巍 「ローマ 碧空・燕・藤の花」
 歴史の知識の浅い私にも自然想い浮んでくるものは古代ローマの
きらびやかな栄華の夢や、北夷の侵略に連関した詩の一節であった。

 
   ホテルからバチカンまでは歩いた記憶があるが、やはりちょっと離れたところに行くにはローマの地下鉄に乗る。古びた車両だが、なかなか趣があっていい。年代物という感じがする。落書きも目立つ。夏の時期は観光客も多いから、地下鉄も人間が多い。


ローマ地下鉄(その3)…2001年夏2014/04/22 20:36

海野弘編
『モダン都市文学Ⅸ 異国都市物語』
平凡社、1991年

 中山巍 「ローマ 碧空・燕・藤の花」
 今日ではイタリーでないと一寸都会には見受けられぬ無蓋の乗用馬車が広場を横切る。艶麗なシニョリータがコケチッシュな後姿を見せる。



 ローマの地下鉄に乗っていると、突然止まってしまった。結局は、駅でしばらく待つことになる。旅行を終えて、イギリスのヒースロー空港に行く途中に地下鉄が止まったことがあるし、こういうハプニングは珍しくない。イタリアは原子力発電をやめてしまったせいもあるのか、電力の供給など不安定な感じがした。
   車両もかなり古かった。遺跡が多いため、地下鉄を掘れないところも結構あるようだ。結局、すぐ再開して、無事に目的地に行くことができた。
   小銭がなくて、切符を買えない時もあった。重たくはなるが、海外に行った時は、できるだけ小銭がたまるようなお金を使い方をすると便利だ。それにしても、日本の自動販売機ほど優れたものはない。