ソウル・国立民俗博物館…2001年春(その1)2013/08/27 19:43

大村益夫、長璋吉、三枝寿勝編訳
『朝鮮短篇小説選 (下)』
岩波文庫、1984年

「そばの花咲く頃」(李 孝石)
   ほかの連中ももうほとんどみな店をかたづけていた。抜け目なくさっさと発っていく者もいた。塩魚売りも鋳掛け屋も、飴売りも生姜売りも姿が見えなかった。あすは珍富と大和に市が立つ。連中はそのどちらかへ六、七十里の道を夜通し歩かねばならない。市場には宴のあとのように、取り散らかり、飲み屋でけんかがはじまっていた。酔っぱらいの罵声にまじって女の荒々しく裂けるような怒声が聞こえた。市場の夕暮れはいつも女の金切り声ではじまった。


   韓国のソウルにやってきた。ゴールデンウィークの時期。ソウルの観光名所になっている景福宮の敷地内にある国立民俗博物館を訪問する。東京もそうだが、アジアの大都市圏はとても大きくなる傾向にある。その点、欧米の大都市圏の方がこじんまりして、観光はしやすい。ソウルは地下鉄も発達しているので、ガイドブックをたよりに、民俗博物館にやってくる。