ウンターデンリンデン……2001年夏2010/06/29 21:20

森 鴎外著
「舞姫」
『阿部一族・舞姫』
1968年、新潮文庫

  ここ迄来し道をばいかに歩みしか知らず。一月上旬の夜なれば、ウンテル、デン、リンデンの酒家、茶店は猶ほ人の出入盛りにて賑はしかりしならめど、ふつに覚えず。我脳中には唯〃我は免すべからぬ罪人なりと思ふ心のみ満ち満ちたりき。 
    


 ウンターデンリンデンは「菩提樹の下」という意味。街路樹の美しい通りである。朝早い時間に、この通りにやってきた。ベルリン分割の際、ソ連占領地区に属したため、必然的に東ベルリンの目抜き通りとなった。
 西ベルリンの豊かさに対抗するため、旧東ドイツ政府は東ベルリンの繁栄を必死にPRする。ソ連式のテレビ塔やこのウンターデンリンデンも宣伝材料だった。テレビ塔は強引に東ドイツの力を見せ付けるようなしらじらしさがあったが、ウンターデンリンデンは伝統、品位のある魅力があった。ベンチに座り、しばし休息。