香港フェリー…1992年夏、1997年夏2014/11/13 21:35

邱永漢著、南條範夫著、戸板康二著、三好徹著、有明夏夫著、川口則弘編
『消えた直木賞 男たちの足音編』
メディアファクトリー、2005年

〈邱永漢/香港〉
「うむ。昨日、国から出て来たんだ。どうも香港へ出て来さえすれば、どうにかなると思う者が多くて困るよ」
 老李は広東語で答えたが、きょとんとしている春木をふりかえると、今度は台湾語で言った。



   香港も何度か行っている。最初は1992年、まだ中国に返還される前の頃だ。学生時代、ロシア、アメリカと訪問したのだが、社会人になってから、なかなか生活していくのが精いっぱいで、外国に行かなかった時期が8年近くもあった。そういうような状況の中、久しぶりに訪れた外国が香港だった。
   香港は狭い地域なので、歩いても十分の移動ができる。ただ、湾を横断するには地下鉄かフェリーになる。短い距離だが、香港のフェリーからの景観は素晴らしい。夏の香港はとても暑い。それだけに海風を浴びると気持ちがいい。


 それから5年後も香港を訪問する機会があった。イギリスに行く途中で、無理に行く必要もなかったのだが、ついつい来てしまった。やはりフェリーにも乗った。この時は中国に返還された直後だった。