フォールトレッカー開拓記念碑…2004年夏2010/09/07 19:48

『鉄の時代』
J・M.クッツェー著、くぼたのぞみ訳
2008年、河出書房新社

 ともに還って、血の海となる----この世が終わればそうなるのだろうか。万人の血----青いシベリアの冬空の下で、暗い緋色に染まるバイカル湖、険しい氷壁がそれを囲み、白い雪におおわれた岸にひたひたと打ち寄せるのは粘つき、淀んだ血。本来の姿にもどった、人類の血。血の総体。あらゆる人間の?いやちがう----別の場所では、有刺鉄線がはりめぐらされたカルーの、太陽がぎらぎらと照りつける、土壁に囲まれた貯水池のなかでは、アフリカーナーとそれに媚びへつらう者たちの血が、淀み、濁っているのだ。



 南アフリカのヨハネスブルグのホテルに滞在していたが、ここはあまりにも治安が悪く、ダウンタウンの観光はコースに入っていない。そこでより安全なプレトリアを観光することになる。
 プレトリアの一つの見どころがフォールトレッカー開拓記念碑だ。小高い丘にある巨大なモニュメントである。オランダ系アフリカ人が欧州大陸を離れ、南アフリカに定住した歴史を示した記念碑である。


 現地人との戦争だけでなく、イギリスとも独立戦争を戦うなどアフリカーナーの歴史は苦難に満ちていた。牛車の絵があるなど、彼らの祖先が農民であったことが理解できる。