ワシントンの青空市場(その1)…2007年秋~冬2010/09/21 20:54

ローラ・リップマン著、吉澤康子訳
『スタンド・アローン』
2000年、ハヤカワ・ミステリ文庫

 ボルチモア市長は、毎朝起きたあとで、顔に大きな笑みを浮かべて南を向くと、広く信じられている。自分の街がどれほどひどくても、首都のワシントンはさらに目もあてられない状態だと期待できるからだ。殺人事件発生率はより高く、学校はもっと荒れ、道路の穴はうんと大きく、前科のある麻薬使用者が幅をきかせているワシントンは、やがてさじを投げ、あらゆる混乱を野放しにしてしまった。テスの車ががたがた揺れながらキャピトルヒルにあるネルソン夫妻の学校をめざしているあいだ、ワシントンの道路は、そう、ものごとはどこまでもひどくなりうるのよ、と歌っているようだった。

 

 土曜日にワシントンに到着して、翌日日曜日も休養日だった。ただ、朝一番に市場の視察が入っていた。デュポン・サークルという地域で開かれていた青空市 場。市民団体が主催している。ボランティア団体なので、関係者の給料はかなり安いと言っていた。


 最初の公式日程だったので、この時のことはよく覚えている。時差ぼけもあったが、比較的意識ははっきりしていた。デュポン・サークルはシンクタンク等も多い場所だ。お洒落なレス トランや美術館もある。ここに来ているお客さんは洗練された人が多い。