ニューヨーク地下鉄(その2)…1983年夏2014/05/27 20:21

亀井俊介、 川本 皓嗣編
『アメリカ名詩選』
1993年、岩波文庫

ハート・クレイン
「ブッルクリン橋に」
どこかの地下鉄の昇降口か独房か屋根裏部屋から
ひとりの狂人がお前の欄干に駆け寄っていく。
そこで一瞬身を傾けて、甲高いシャツを膨らませたかと思うと、押し黙った隊列から、ひとつの冗談が落ちていく。

マーク・レスリー、チャールズ・シャットルワース著
赤井照久訳
『サブウェイ・ガンマン』
JICC出版局、1990年

   地下鉄訪問は、クワーク証言の初日が終わった金曜日、その週の公判審理終了後に実施された。評決後に私たちを家まで送ってくれたミニバスで数ブロック走った。そしてBMTのJ線のチェンバース街駅にあるプラットホームまで階段で降りた。そのプラットホームは長い間、閉鎖されていた。私たちが乗りこんだ電車は八両編成だったが、うち六両は事件が起こったのと同じR一二二型だった。



   やはりニューヨークの地下鉄はちょっと怖かった。このように落書きだらけだし、異様な雰囲気だった。しかし、実際に乗ってみると快適。アメリカはチップが面倒なので、タクシーを利用した場合でもチップが欠かせない。だから、チップの要らない地下鉄が煩わしくなくていい。
   マンハッタンがこんなに小さな地域だとは思わなかった。東京の都心と比べると、手狭ではある。カリフォルニアから来ただけに、ニューヨークはよけい集積地であることが理解できた。歩きだけでも、ニューヨークのかなりの地域を見ることはできるが、やはり地下鉄を使うと移動が楽だ。
   ただ、さすがに夜は怖いので、地下鉄は昼間だけに乗ることにした。行きは明るかったので地下鉄を使ったと思うが、ブロードウェイでミュージカルを見た後はかなり暗くなっていた。とにかく地下鉄に乗るのはやめた。夜は犯罪も多いと聞いた。むしろ歩いたほうが安全だ。劇場からホテルまでは徒歩で帰った。